赤子の手をひねる

容易にできることのたとえ。また、力量が劣る者をたやすく打ち負かすこと。

< 2025年02月 >
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てぃーだイチオシ
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マジックでもかまわない

夢のような都市が夢ではないことを十分に知っている。
 弓子もまた、僕と同じこの都市を見ているに違いない、もしかしたら「あいつ」と一緒に。僕は弓子と、弓子は僕と、同じものを、今、見ているはずだ。
 いや、そうじゃない。
 僕はだんだん、はっきりと分かってきた。
弓子の見たあの人=「あいつ」とは、つまり、僕のことだったのだ。
 僕が目撃したあの人は、朝の斜光を浴びながら踊るような歩き方で〈緑橋〉の中程まで進み、立ち止まって弓子と一瞬目を合わせた。それを合図に、弓子は奪った「火」を鉄の欄干に向かって投げた。そして〈緑橋〉は燃え、燃え尽きた。
 弓子はあの人を見たと言う。僕もまたその時、「あいつ」を見た。何度でも立ち現れる情景。僕は「あいつ」を確かに見た。でも僕たちの他に「あいつ」を見た者はいない。僕が、そして弓子が見たことを保証する証拠は何ひとつない……。それならば、あそこには三人の人物がいたのではない。最初から二人しかいなかったのだ。二人、僕と弓子と。
 弓子と目を見合わせたのは「あいつ」ではない。それは僕だった。弓子に合図を送ったのは僕なのだ。これはすべて、僕と弓子が行ったことなのだ。
 弓子と僕は、僕たちにしか見えないあの人=「あいつ」に導かれて、この町の終わりと始まりに立ち合ったのだ。今、ここは始まりの都市なのだから。
 このようにして、この町は始まるべきだったのだ。
高田馬場駅前の美容院


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